東京高等裁判所 昭和28年(う)1806号 判決
被告人 越川惣右エ門
〔抄 録〕
論旨第三点について。
仍つて本件記録を精査するに、本件起訴状の記載によれば、検察官が、本件公訴の提起と同時に略式命令の請求をしていること、而してこれが略式命令の請求書に刑事訴訟規則第二八八条所定の保証書が記録上存在していないこと洵に所論のとおりである。
然し乍ら、公訴の提起は、刑事訴訟法第二五六条所定の要件を具備する起訴状の提出さへあれば、それを以つて足り、仮に之と同時になされた略式命令の請求の方式に違法の廉ある場合と雖も、此の違法は単に略式命令の請求としての効力に影響あるは格別、起訴並に正式審判の効力には毫も影響を及ぼさないものと謂わなければならない。果して然らば、本件において検察官が略式命令の請求をなすに当りて所論の如く刑事訴訟規則第二八八条所定の保証書を添附しなかつたことは、略式命令の請求としては違法たるを免れないが、本件起訴状そのものとしては毫も刑事訴訟法第二五六条所定の要件を欠如するところなきを以つて、本件公訴の提起は固より適法であつて、所論は到底採用し難く論旨はその理由がない。